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「AIが書いたコードは動く。でも、安全かどうかは別の話」——Veracodeが8月1日に公開した年次レポートが、この問いに数字で答えを出しました。100種類以上のAIモデルをテストした結果、平均のセキュリティパス率は56%。つまり、セキュリティの指示を特に与えなければ、AIが生成するコードの約44%には、OWASP Top 10に含まれる既知の脆弱性が混入しています。しかも、この数字は昨年の55%からほぼ動いていません。一方で、コードの構文が正しいかどうかのパス率は約100%——「動くコード」を書く能力は完成に近い、しかし「安全なコード」を書く能力は1年間で止まっている。そして今、AIは全体のコードコミットの約半分を書いています。
何が分かったのか——「速くなる量」と「変わらない失敗率」
Veracodeは2025年から100種類以上のAIモデルを対象に、Java・Python・C#・JavaScriptの4言語と、SQL インジェクション・XSS・ログインジェクション・安全でない暗号化アルゴリズムという4つの脆弱性カテゴリに絞ったテストを繰り返してきました。2026年版のレポートで明らかになったのは、「生成するコードの速度と量は劇的に増えたが、セキュリティパス率はほぼ横ばい」という実態です。
最も問題なのは、この失敗率が「増えたコード量」に対してそのまま掛け算される、という構図です。昨年も今年も44〜45%のAI生成コードに脆弱性があるという数字は変わっていません。しかしAIが書くコードの総量は、この1年で大幅に増えています。「失敗率が横ばいのまま、分母だけが増えた」——つまり、脆弱なコードの絶対量は急増し続けているということです。
XSSには86%が失敗する——「動く」と「安全」の差が最も大きい脆弱性
脆弱性の種類ごとに見ると、XSS(クロスサイトスクリプティング)への対策が最も弱く、AIが生成したコードサンプルの86%が、XSSの防御テストで失敗しています。SQLインジェクションも高い失敗率を示しており、AIが「コードを動かすこと」に最適化される一方で、「外からの入力を正しく扱う」という、セキュリティの根幹にある考え方が、モデルの学習にまだ十分に組み込まれていないことが浮かび上がります。
Cloud Security Alliance(CSA)の独立した調査では、AIを活用した開発者が同僚と比べてコミット数を3〜4倍に増やす一方で、セキュリティの問題を10倍の頻度で持ち込んでいるという結果が出ています。「速くはなるが、セキュリティの問題も同じペースで増える」という、現場での実態が数字として出てきた形です。Georgia TechのVibe Security Radarは、2026年3月までの1ヶ月間だけで、AIコーディングツールに直接起因する74件のCVEを確認しています。
新しいリスク「Slopsquatting」——存在しないパッケージを薦めるAI
今回のレポートが指摘した、これまであまり知られていなかったリスクが「Slopsquatting」です。AIのコーディングツールが、実際には存在しないソフトウェアパッケージを「依存関係として使うべき」と薦めてしまう、という現象です。攻撃者は、AIが薦めそうな名前のパッケージを事前にパッケージレジストリに登録しておき、開発者がそのまま`pip install`や`npm install`してしまうと、マルウェアが侵入します。調査では、AIが提案したPythonとJavaScriptの依存パッケージの19.7%が、実際には存在しないパッケージだったと報告されています。
AIモデルは、「与えられた仕様を満たすコードを書く」という課題を解くように最適化されています。セキュリティの欠陥——入力のサニタイズが足りない、認証の処理が甘い、パッケージの選定が安全でない——は、機能の仕様書には書かれないことが多く、明示的に指示しない限り、AIはそこに注意を払いません。「コードを書いてほしい」と頼むだけではなく、「セキュアなコードを書いてほしい、○○の脆弱性を防ぐこと」と具体的に指示することが、AIコーディングを実務で使う際の大前提です。
「AIが脆弱性を発見する」と「AIが脆弱性を作る」——同じコインの両面
このブログでは、AIがWordPressの重大な脆弱性(wp2shell)を25ドルで発見したこと、GoogleのAIが1ヶ月でChromeの1,072件の脆弱性をパッチしたことをお伝えしてきました。今回のVeracodeのレポートは、その”裏側”を示しています。AIは脆弱性を見つけるのも、作るのも、同じように得意です。防御側への活用が進む一方で、AIが書いたコードを「セキュリティテストなしに本番に出す」ことのリスクも、同じペースで積み上がっています。
Veracodeの共同創業者クリス・ワイソパル氏は「AIによるコードの速度が上がれば上がるほど、開発者はコンプライアンスリスク・セキュリティアラート・品質問題に溺れていく」と述べています。速くなった分だけ、検証のプロセスをどこかで省いてしまうリスクが高まる——これは規模の大小を問わず、AIコーディングを使っている全ての開発者に共通する課題です。
AIコーディングを使う開発者が今日からできること
「XSSを防ぐこと」「SQLインジェクションに対して安全な形でクエリを書くこと」という指示を、コードを書かせる際に必ず含めます。指示がなければ、AIはセキュリティに注意を払いません。
AIが書いたコードは「動く」かどうかと「安全かどうか」は別物です。静的解析ツール(SAST)やOWASPのチェックリストを使った確認を、レビューの工程に組み込みます。
Slopsquattingに備え、AIが提案したパッケージは必ず公式リポジトリ(PyPI・npm等)で実在を確認してからインストールします。ダウンロード数や更新頻度も確認する習慣をつけておくと安全です。
セキュリティレビュー・安全な開発体制の設計
AIコーディングツールを使った開発でも、セキュリティの検証工程を省かない体制づくりをサポートします。プロンプト設計・静的解析の導入・パッケージの安全確認フローまで、実務に即した安全な開発環境を整えます。「AIを使って開発しているが、セキュリティが不安」という方は、お気軽にご相談ください。島根県から全国対応です。
まとめ
AIコーディングの安全な開発体制づくりのご相談はお気軽にどうぞ。
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