先日お伝えした「Anthropicが中国企業の抜け道アクセスを塞ぎ始めた」話には、実は続きがありました。今度はAlibabaが逆襲に出ています。中国のテック大手Alibabaは、Anthropicの人気AIコーディングツール「Claude Code」を社内で「高リスクソフトウェア」に指定し、7月10日までに全社員へのアンインストールを指示しました。きっかけは、AIがユーザーの所在地を密かに調べていた、という発見です。そしてこの発見、実はAnthropic自身がその存在を認めています。米中のAI摩擦が、また一段深まった出来事です。
何が起きたのか
発端は、Redditに投稿された1件の技術的な調査報告でした。あるユーザーが、無効化されたリモート操作機能を復元しようとしてClaude Codeを解析したところ、バージョン2.1.91(4月2日リリース)以降、リリースノートに記載のない「検知ロジック」がひそかに組み込まれていたことを発見しました。その中身は、プロキシ経由の接続を検知した際に、システムのタイムゾーンが「Asia/Shanghai」や「Asia/Urumqi」と一致するか、接続先のプロキシURLが中国のドメインの一覧と一致するかを確認する、というものだったとされています。
この発見を受けて、Alibabaは7月3日、Claude Codeを「セキュリティ上の脆弱性を持つ高リスクソフトウェア」のリストに追加。7月10日をもって、全社員に業務でのClaude Code利用を禁止し、Anthropicのモデル・エージェント製品(Sonnet・Opus・Fable系列を含む)を全てアンインストールするよう指示したと報じられています。代わりに使うよう指定されたのは、Alibaba自社製のAIコーディングツール「Qoder」です。
先日「未検証」とした話が、実は本当だった
ここで正直に訂正しておきたいことがあります。先日の記事で、「Claude Codeがタイムゾーン等を照合し、不可視の追跡情報を埋め込んでいた」という話を、「単独ソースによる未検証の情報」として扱いました。今回、Anthropicのエンジニアであるタリク・シヒパー氏が、X上でこの機能の存在をはっきり認めています。氏によれば、これは3月に開始した実験的な機能で、「認可されていない再販業者による不正利用の防止と、蒸留攻撃からの保護」を目的としていたとのことです。氏は「前々から削除しようと思っていた」とも述べ、実際にこのコードを取り除くプルリクエストは、Redditへの投稿翌日である7月1日にマージされています。
つまり、当時「盛った話ではないか」と慎重に扱った情報は、結果的に正確だったことになります。情報源が単独だからといって、必ずしも間違っているとは限らない、という教訓でもあります。
Anthropic側からすれば、これは規約違反の抜け道アクセスや蒸留攻撃を防ぐための、正当な防御策です。一方、中国側のユーザーやAlibabaからすれば、自分たちの所在地を密かに調べて識別する仕組みは、監視・バックドアとして映ります。同じ技術的な仕組みでも、立場によって「防御」にも「監視」にも見える。今回の一件は、AIサービスの利用規約や技術的対策が、単なる技術論では済まない国際的な緊張の中にあることを、あらためて示しています。
一連の対立の流れ
ここまでの経緯を時系列で整理すると、対立の深まり方がよく見えてきます。6月10日、Anthropicが米上院に書簡を送り、Alibaba関連の運営者による大規模な蒸留攻撃を告発。その後、Financial Timesの報道で、Ant GroupやByteDanceなど中国企業がシンガポール法人やVPN経由でClaudeにアクセスしていた実態が明らかになり、Anthropicはこの抜け道を塞ぐ対応に着手しました。そして今回、その渦中で見つかった「中国ユーザー検知コード」が引き金となり、Alibabaが正式にClaude Codeを禁止する、という展開です。
Alibabaは蒸留攻撃の疑惑について、これまで公式には詳しく反論していません。今回の禁止措置についても、表向きは「セキュリティ上の懸念」を理由に挙げていますが、蒸留攻撃告発への対抗措置という側面も強いと見られています。
AI活用・システム開発
今回のように、AIサービスの利用制限や規約は、企業間・国家間の対立によっても急に変わることがあります。特定のAI・特定のベンダーに依存しすぎない構成で、こうした地政学的なリスクにも強い業務システムを設計します。「今のAI活用体制、こういうリスクへの備えはあるか気になる」という方は、お気軽にご相談ください。島根県から全国対応です。
まとめ
AI活用のリスク分散・複数ベンダー体制のご相談はお気軽にどうぞ。
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