「ブロックチェーン=仮想通貨」というイメージを持つ人は多いですが、その応用範囲はビットコインをはるかに超えています。金融・医療・物流・エンターテインメントまで、ブロックチェーンが実際にどう使われているのかを具体的に解説します。
ブロックチェーンの「強み」をおさらい
活用事例を理解するには、ブロックチェーンが何を得意とするかを整理しておく必要があります。
この4つの強みが「どんな問題を解決できるか」という視点で各事例を見ていくと、理解しやすくなります。
① 金融・送金
最もわかりやすい活用です。国際送金を例にとると、従来は銀行を複数経由するため3〜5営業日かかり、手数料も高額でした。ブロックチェーンを使えば、仲介者なしに数分〜数十分で送金が完了し、手数料も大幅に下がります。
銀行口座を持たなくても、スマートフォンとインターネットがあれば融資・運用・取引ができる仕組みです。Ethereumのスマートコントラクトがその中核を担っています。世界の銀行口座を持てない14億人にとってインパクトのある技術です。
USDTやUSDCのような法定通貨に価値を連動させた仮想通貨です。価格変動を抑えながら送金の速さと安さを活かせるため、国際的な決済インフラとして企業・政府レベルでの導入が進んでいます。
② サプライチェーン・食品トレーサビリティ
「この食材がどこで作られ、どのルートで届いたか」をブロックチェーンに記録することで、改ざん不可能な産地証明が実現します。
Walmartはレタスのサルモネラ汚染事故を受け、IBMと共同でブロックチェーンによる食品トレーサビリティシステムを導入しました。従来は汚染源の特定に7日かかっていたものが、2.2秒で追跡できるようになったと報告されています。
日本でも農産物の産地偽装対策や、高級食材の真贋証明への応用が始まっています。
③ 医療・電子カルテ
患者の医療記録を複数の病院・クリニック間で安全に共有するという課題に、ブロックチェーンが応用されています。
現状では、病院を変えるたびに過去の検査データを紙で持参したり、再検査を受けたりする非効率が生じています。ブロックチェーンで患者が自分のデータを管理・共有できるようになると、この問題が解消されます。
また、薬の製造から流通までを記録することで、偽造医薬品の流通を防ぐ仕組みとしても研究が進んでいます。
④ NFT・デジタルコンテンツの所有権
NFT(Non-Fungible Token)は、デジタルデータに「唯一性」と「所有権」を持たせる技術です。デジタルアートやゲームアイテム、音楽、スポーツのハイライト映像などが対象になります。
2021年のブームは投機的な側面が大きかったですが、本質的な価値は「デジタルコンテンツのオリジナル証明」にあります。アーティストが中間業者なしに作品を直接販売し、二次流通でも収益を得られる仕組みとして、クリエイターエコノミーへの応用が続いています。
⑤ 不動産登記・スマートコントラクト
不動産の売買契約は、現状では司法書士・銀行・不動産会社など多くの仲介者が関わり、手続きに数週間かかります。スマートコントラクトを使えば、「代金が支払われたら自動的に所有権を移転する」というプロセスを自動化できます。
スウェーデン・ジョージア・ドバイなどでは、ブロックチェーンを使った土地登記システムの実証実験が進んでいます。日本でも法務省がブロックチェーンを用いた登記システムの研究を進めています。
⑥ 電子投票
ブロックチェーンを使った電子投票は、「改ざんが検知できる」「誰がどう投票したかの記録が残る」「特定の管理者が結果を操作できない」という特性を活かせます。
米国のいくつかの州では、海外在住の有権者向けにブロックチェーン投票の試験運用が行われています。ただし、「誰が投票したかが分かる環境での強制投票のリスク」など解決すべき課題も残っています。
ブロックチェーンで「できないこと」
万能に見えるブロックチェーンですが、苦手なことも明確にあります。
「ブロックチェーンを使うべきかどうか」の判断基準は、「複数の不特定多数が関与し、改ざんを防ぐ必要があるか」です。管理者が1人いれば十分な用途には、普通のデータベースの方が適しています。
