前回、東証プライム上場1,552社のAI検索対応を全数調査しました。今回はその対象を、全国1,741の市区町村に移します。住民サービスの情報がAIにどう読まれるかは、これからの行政広報にとって無縁の話ではありません。結果は、上場企業よりもさらにはっきりしていました。
全国に1,741ある市区町村のうち、AIに向けて自らの情報を整えていた自治体は、数えるほどしかありませんでした。そしてその大半は、意図的な対応ですらありませんでした。
上場企業と並べると、差がはっきりする
前回のプライム1,552社と、今回の自治体1,741を同じ指標で並べます。
どの指標でも、自治体は上場企業を下回りました。上場企業ですら手つかずに近い領域なので、これは驚くことではないかもしれません。ただ、robots.txt の保有率そのものも34.7%(プライムは56.9%)と低く、AI以前に、クローラーへの指示という基本的な設定からして半数以上が未対応という状態でした。
調査方法
総務省「全国地方公共団体コード」に基づく全国の市区町村1,741団体。公式サイトURLは総務省コードとオープンデータを突合し、全団体について特定。
各自治体3リクエスト。トップページ、/llms.txt、/robots.txt。1団体あたり1.5秒以上の間隔を空けて巡回。
/llms.txt に200が返っても中身がHTMLのエラーページ(ソフト404)である場合があるため、検出した全件の中身を確認した。初回検出16件のうち14件がこの偽陽性で、実際の設置は2件だった。
結果1:llms.txt は全国で2自治体。しかも自動生成
llms.txt は、サイトの内容をAIに正しく理解させるための要約ファイルです。設置していたのは、全国1,741自治体のうち埼玉県皆野町と三重県紀宝町の2つだけでした。
ただし、この2件の中身を確認すると、いずれも WordPress のSEOプラグイン(All in One SEO)が自動生成したものでした。担当者がAI検索を意識して設置したというより、プラグインが副産物として吐き出したものと見るのが自然です。つまり、明確な意図をもって llms.txt を用意した自治体は、実質的にゼロに近いといえます。
今回、/llms.txt にアクセスして「ファイルがある」と応答した自治体は16ありました。しかし中身を1件ずつ開くと、14件は「ファイルが見つかりません」のエラーページをHTMLで返しているだけでした。存在確認だけで数えていれば、実態の8倍の数字を出すところでした。AI対応状況の調査で数字が独り歩きしやすいのは、まさにこの部分です。
結果2:規模の大小は、関係がなかった
「対応が進んでいないのは小規模な町村では」と考えるのが自然かもしれません。しかし、そうではありませんでした。
札幌市や大阪市を含む政令指定都市20市ですら、AIクローラーへの言及も構造化データもゼロでした。robots.txt の保有率も、市と町村でほとんど変わりません。これは予算や職員数の問題というより、「まだ検討課題として認識されていない」ことを示しています。大都市も小さな町も、同じスタートラインに並んでいる、という状態です。
結果3:先に動いていた9自治体
数少ないながら、robots.txt にAIクローラーへの記述があった自治体が9つありました。
顔ぶれを見ると、大都市ではなく、むしろ小規模な市町が並んでいます。サイトの更新やリニューアルのタイミングで、新しい設定を取り入れた結果かもしれません。規模が小さいほうが、かえって身軽に動けるという面はありそうです。
そもそも、なぜ自治体が整える必要があるのか
企業と違い、自治体にはAI検索で「選ばれる」ための競争はありません。では整える意味はどこにあるのか。理由は正確さです。
住民が生成AIに「◯◯市 ごみ 出し方」「◯◯町 児童手当 いくら」と尋ねる場面は、すでに始まっています。このときAIが古い情報や他自治体の情報を混ぜて答えれば、住民は誤った行動をとりかねません。窓口や電話への問い合わせが、かえって増えることもあります。
自治体サイトの情報を、AIが正確に読み取れる形に整えておくことは、誤情報による混乱を防ぐという、行政本来の役割の延長線上にあります。AIに媚びる話ではなく、公式情報を公式のまま届けるための備えです。
正確に読ませるための整備
私たちは自治体向けのウェブ・DX支援を行っています。構造化データの実装、llms.txt の設計、AIクローラー方針の策定まで、住民向け情報が生成AIに正しく伝わるためのサイト整備をお手伝いします。「まず自分の自治体サイトが今どう見えているのか診断してほしい」というご相談から承ります。島根県から全国対応です。
まとめ
上場企業を調べたときにも感じたことですが、AI検索対応は「遅れている」というより「まだ論点として机の上に載っていない」段階です。自治体ではそれがより鮮明でした。裏を返せば、いま少し整えるだけで、住民に正確な情報を届ける準備が整います。特別なシステム投資ではなく、テキストファイルと設定の話です。
【調査概要】対象:総務省「全国地方公共団体コード」に基づく全国市区町村1,741団体(公式サイトURLを特定できた全数)/調査日:2026年7月/方法:各自治体公式サイトのトップページ、/llms.txt、/robots.txt を取得し機械判定。llms.txt はHTMLを返す偽陽性14件を目視で除外。応答が得られなかった団体は未設置として集計。数値は調査時点のものであり、各自治体の設定は随時変更されうる。前回のプライム調査との比較は、同一の判定基準・同一のスクリプトによる。
自治体サイトのAI対応・DX整備のご相談はこちら
無料相談する →