「SaaSはもう終わり、AIで全部作ればいい」——そんな声がX上で飛び交う中、現役の経営者たちが「現実はそう甘くない」と語り始めています。今年2月、AnthropicのAIエージェント発表を機にSaaS銘柄が軒並み売られ、「SaaS is dead(SaaSの死)」という言葉が世界的に注目されました。しかし、実際に現場でシステムを使い・作り・保守してきた人間から見えるのは、もう少し地味で現実的な景色です。今日は、Xで話題になっている経営者たちの「本音」と、ハイブリッド活用の現実を整理します。
「SaaS is dead」とはそもそも何か
発端は2024年12月、MicrosoftのCEO サティア・ナデラ氏がポッドキャストで「AIエージェントがSaaSのビジネスプロセスを自動化し、従来のSaaSの役割が変わる」と述べたことです。そこに火がついたのが、2026年2月のAnthropicによるClaude Coworkの発表でした。AIエージェントが業務を代行する——という現実味を帯びた発表に、投資家たちが反応し、Salesforce・Adobe・ServiceNowなどのSaaS株が急落。世界のソフトウェア関連銘柄から、1週間で150兆円超の時価総額が吹き飛んだとされています。
「SaaSは死んだ」の意味するところは、正確にはこうです。CRMやプロジェクト管理ツールのような業務システムを月額料金で使い続けるモデルが、AIが要件を理解して即座にシステムを生成してくれる時代に、本当に必要なのか——という問い直しです。実際、Klarna(スウェーデンの決済サービス)はSalesforceとWorkdayの契約を打ち切り、AIエージェントで代替したと発表したことが話題になっています。
現役経営者の「本音」——「簡単に言うな」
こうした「SaaS全部AIで作れる論」に対し、X上で現実的な反論が広がっています。ベルフェイスの代表・中島一明氏は、AIでCRMや社内システムを内製するトレンドに対し、「バグ修正・セキュリティ対応・保守の負担の大きさ」を指摘します。さらに、「AIコストが増加すれば、内製で削減できたはずのSaaS費用が相殺される恐れがある」と警告しています。
一方、kubellの代表・山本正喜氏が紹介するのは、別の角度の現実です。「SaaSのAPIを活用しつつ、自社のUIだけを内製するハイブリッドモデル」が実際に機能しているという事例です。非エンジニアが開発エージェントを使ってフロントエンドをカスタムし、バックエンドのデータやロジックはSaaS側のAPIに任せる——という形が現実的だと述べています。
AIでCRMやワークフローを「作ってみる」のは確かに簡単になっています。しかし本番で動かし続けるには、セキュリティ対応・アクセス権限管理・障害時の対応・データバックアップ・規制への準拠など、「作ること」以外の要素が山積します。SaaSはまさにこの「動かし続けるためのコスト」を月額料金に含めています。それを全部自前で担う、ということの重さは、現場でシステムを維持し続けた人間でないと実感しにくいものです。
SaaS側も黙っていない——AIで「強化」する反撃
「SaaS is dead」という声に対し、SaaS各社は当然反撃しています。代表的なのがSalesforceの「Agentforce」です。AIエージェントをSaaS本体に組み込み、既存のデータ・ワークフロー・権限管理の上でAIを動かす、というアプローチです。つまり「SaaSを捨ててAIで置き換える」のではなく、「SaaSにAIが乗っかる」形への進化です。ServiceNowやAdobe、Microsoftも、自社製品にAIエージェントを統合する方向で開発を加速しています。
Gartnerは「2028年までに、ユーザー体験の3分の1がネイティブアプリケーションからエージェント型フロントエンドに移行する」と予測していますが、同時にBain & Companyは「SaaSの死ではなく、業務システム間の人手の調整作業を自動化する1,000億ドル規模の新市場が立ち上がりつつある」という見方も示しています。市場全体としては、「SaaSが消える」のではなく「SaaSの役割が変わる」という方向に収束しつつあります。
中小企業・個人事業主にとっての現実的な選択
セキュリティ・権限管理・規制対応が厳しい領域はSaaSに任せる。一方で、業務の流れや画面・自動化の部分はAIで柔軟に作る——という使い分けが、現実的なアプローチです。「どこはSaaSのまま、どこをAIで変えるか」を切り分けることが最初の一歩です。
AIで業務ツールを作るコストは劇的に下がっています。しかしバグが出たときの修正、セキュリティアップデートの適用、データ消失時のリカバリーといった「動かし続けるコスト」は、AIが下げてくれるわけではありません。内製を検討する際は、この維持コストを先に試算しておくことが重要です。
SaaSを解約してAIで代替すれば、固定の月額費用はなくなります。しかしAIの推論コストは、使った分だけかかる従量制です。利用が増えれば増えるほど、AIのコストも増えます。SaaSの費用と、AIの運用コストを丁寧に比較した上で判断することが重要です。
ハイブリッドなDX・AI活用の設計
既存のSaaSやWordPressを活かしながら、AIで自動化・効率化できる部分を段階的に取り入れる設計をご提案します。「SaaSを全部やめるべきか」「どこまでAIで作れるか」という判断から一緒に考えます。コスト比較から、実際の開発・保守まで対応します。お気軽にご相談ください。島根県から全国対応です。
まとめ
SaaS活用とAI導入のバランス設計のご相談はお気軽にどうぞ。
DX・AI活用のご相談はこちら
無料相談する →