生成AIが情報の入口になりつつある今、企業サイトはAIに対してどう振る舞っているのか。推測ではなく実数で知りたかったので、東証プライム市場の全1,552社について、公式サイトを1社ずつ巡回して調べました。結果は、想像していたより極端でした。
大半の企業は、AIクローラーを拒否しているのでも、許可しているのでもありません。何も決めていない。そしてその結果、自動的に全面許可の状態に置かれています。
調査方法
数字の出所を先に明らかにしておきます。
日本取引所グループ公表の上場銘柄一覧(2026年6月30日現在)から「プライム(内国株式)」1,559銘柄を抽出。優先株・社債型種類株7銘柄を除いた1,552社。公式サイトURLは全社について特定済み。
各社3リクエスト。トップページ、/llms.txt、/robots.txt。1社あたり1.5秒以上の間隔を空けて巡回。
/llms.txt に200が返っても中身がHTMLのエラーページである場合(ソフト404)があるため、検出42社の中身を全件確認し、5社を除外。
29社は応答が得られず判定不能。未設置として集計しているため、実際の設置率はごくわずかに高い可能性がある。
結果1:llms.txt は37社。4割が情報・通信業に集中
llms.txt は、サイトの内容をAIに正しく理解させるための要約ファイルです。robots.txt が「入るな」を伝えるものだとすれば、llms.txt は「これを読んでほしい」を伝えるものにあたります。
設置していたのは37社。業種別に見ると、偏りが明確に出ました。
情報・通信業が8.6%(14社)で突出。設置37社のうち約4割がこの業種に集中していました。オプティム、ユーザーローカル、ウイングアーク1st、Sun Asterisk、トレンドマイクロ、GMOグローバルサイン・ホールディングス。いずれも自社でウェブとAIを扱う企業です。
裏を返せば、現時点の llms.txt はIT業界が自分たちの流儀を自分たちで実践している段階にとどまっている、と読めます。
業種で「唯一の1社」
興味深いのは、IT以外から少数だけ混ざっている企業です。
そして銀行業69社、化学114社、陸運業36社、精密機器27社、金属製品26社、鉄鋼20社、非鉄金属20社、保険業11社は、いずれも設置ゼロ。
結果2:97%が「何も書いていない」
ここからが本題です。
robots.txt は、クローラーに「どこを見てよいか」を伝えるファイルです。重要なのは、書かれていない相手は制限されていないことになるという点。禁止と明示されない限り、クローラーは自由に巡回してよい。これがウェブの既定のルールです。
つまりAIクローラーについて何も書いていないことは、拒否していないということであり、実質的に無条件の全面許可を意味します。
最も多く拒否されていたのはByteDanceのBytespider(19社)で、OpenAIのGPTBot(14社)を上回りました。一方でPerplexityBotを全面拒否していたのは1社のみ。各社が用途を精査した結果というより、「名前を知っているボットしか書けない」という事情を反映していると考えるほうが自然でしょう。robots.txt は、その企業がAIクローラーの現状をどこまで把握しているかの鏡になっています。
結果3:構造化データも15.8%
ついでに、トップページのJSON-LD構造化データも取得しました。Organization または Corporation 型を出力していたのは245社(15.8%)。
構造化データは、AIに限らず検索エンジンが企業情報を機械的に読み取るための基本的な仕組みです。会社名、所在地、ロゴ、連絡先を曖昧さなく伝えられる。ここが空白だと、AIは本文テキストから推測するしかなくなります。
では、何をすればいいのか
数字を並べただけでは動けないので、具体的な手順を書きます。いずれも大がかりな改修は不要で、テキストファイルを2つ置くだけの作業です。
1. まず方針を決める
技術の前に判断があります。自社のコンテンツを、AIの学習に使わせるか。AI検索の回答に引用させるか。この2つは別の話で、分けて考える必要があります。
学習には使われたくないが、AI検索では正しく紹介されたい、というのは十分あり得る立場です。実際、ボットは用途ごとに分かれています。
後者まで一律に拒否すると、AI検索の回答から自社が消えます。今回の調査で、GPTBotを拒否しつつOAI-SearchBotには言及していない企業が複数ありましたが、意図的な使い分けなのか、単に区別を知らなかったのかは判別できません。
2. robots.txt に明示する
学習は拒否し、検索での参照は許可する場合の記述例です。
逆に、AIに積極的に読ませたい場合は、拒否を書かないという判断も当然あります。重要なのは決めた上でそうしていることで、今回見えたのは、その決定自体が行われていないという実態でした。
3. llms.txt を置く
llms.txt はサイト直下に置くマークダウン形式のテキストで、AIに読んでほしい情報の地図にあたります。基本形はこうなります。
肝心なのは冒頭の要約部分です。自社を一文でどう説明するかを自分で決めて書く。ここを書かなければ、AIは断片的な記述から推測して説明を組み立てることになります。
サイト設計・LLMO対策
robots.txt の方針決定から、llms.txt の設計、構造化データの実装まで。「うちのサイトは今どうなっているのか」の診断だけでもお受けしています。同業他社の対応状況を踏まえたうえで、何から着手すべきかをご提案します。島根県から全国対応です。
まとめ
これを「遅れている」と評するのは簡単ですが、実態はもう少し単純だと思います。判断すべき論点として、まだ机の上に載っていない。逆に言えば、いま手を打てば業種内で最初の1社になれる可能性が高い。医薬品31社で武田薬品工業が、輸送用機器38社でSUBARUが、既にそうしているように。
【調査概要】対象:東京証券取引所プライム市場 内国株式1,552社(日本取引所グループ公表の上場銘柄一覧2026年6月30日現在より、優先株・種類株7銘柄を除く全数)/調査日:2026年7月21日/方法:各社公式サイトのトップページ、/llms.txt、/robots.txt を取得し機械判定。llms.txt はHTMLを返す偽陽性5社を目視で除外。29社は応答が得られず判定不能のため未設置として集計。設置率は母集団1,552社を分母とする。本調査の数値は調査日時点のものであり、各社の設定は随時変更されうる。
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