東証プライム上場企業、全国自治体に続き、今回は全国の4年制大学812校のAI検索対応を全数調査しました。受験生が生成AIで進学先を調べる時代に、大学サイトはAIにどう読まれているのか。結果は、企業と自治体のちょうど中間——そして「ある分野」への偏りが見えました。
設置している大学はごくわずかでした。ただし顔ぶれを見ると、これまで調査した企業・自治体には無かった、はっきりとした分野の偏りが現れました。
大学は「企業と自治体の中間」だった
これまで調査したプライム上場企業1,552社、全国自治体1,741団体と、同じ指標で並べます。
大学は、多くの指標で企業と自治体のちょうど間に収まりました。興味深いのは robots.txt 保有率で、ここだけは58.3%と、上場企業(56.9%)をわずかに上回っています。大学のac.jpドメインは歴史が長く、基本的なウェブ運用のノウハウが蓄積されているためと考えられます。ただし、その robots.txt の中で「AIクローラー」に言及していたのは、わずか8校でした。
調査方法
「◯◯大学」を正式名称とする全国の4年制大学812校(短期大学・専門職大学・大学院大学・専門学校は除外)。文部科学省が公表する大学数(約810校)とほぼ一致する。
各校3リクエスト。トップページ、/llms.txt、/robots.txt。1校あたり1.5秒以上の間隔を空けて巡回。
/llms.txt が200を返しても中身がHTMLのエラーページ(ソフト404)の場合があるため、検出16件を全件確認し、偽陽性2件と空ファイル1件を除外。設置は13校。
64校はセキュリティ設定等で応答が得られず判定不能。設置率は母集団812校を分母とする(応答のあった748校を分母にすると1.74%)。
結果1:設置校は「医療・保健系」に偏っていた
llms.txt を設置していた13校を並べると、ある傾向がはっきり出ました。
大阪物療大学、日本保健医療大学、星薬科大学、鈴鹿医療科学大学、群馬県立県民健康科学大学。13校のうち相当数が、医療・保健・薬学系の大学です。さらに robots.txt でAIクローラーに言及していた8校にも、福島県立医科大学、自治医科大学、健康科学大学が含まれていました。
医療・保健系の大学は、受験生獲得の競争が激しく、規模も比較的小さいため、新しいWeb施策を素早く取り入れやすい層です。前回のプライム調査では「情報・通信業」が突出していましたが、今回は「医療系大学」が同じ役回りを演じています。組織全体が動くのではなく、分野の中の一部が先に動く——という構図は、企業でも大学でも共通していました。
結果2:半分は「意図せず設置」されていた
設置13校のうち、AIに向けた要約を実際に手で書いていたのは7校。残る6校は、WordPressのSEOプラグイン(All in One SEO)が自動生成したものでした。
自動生成の llms.txt は、ページのタイトルとリンクを機械的に並べただけで、「この大学は何が強いのか」という肝心の説明が入りません。ファイルは存在していても、AIに伝えたい内容を大学自身が決めていない状態です。手書きの7校——たとえば星薬科大学が「東京都品川区荏原に所在する薬学部単科大学」と自らを一文で定義しているような例——とは、意味合いが大きく異なります。
この「自動生成が半分を占める」構図は、前回の自治体調査(設置2件がいずれも自動生成)とも重なります。llms.txt の設置率という数字は、実際の取り組みよりも高く見えやすい、という点に注意が必要です。
結果3:大学サイトは「AIを弾く」設定が多い
今回、812校のうち64校(約8%)は、通常のアクセスに対して応答を返さず、判定できませんでした。プライム企業(約4%)や自治体(0.5%未満)と比べて明らかに高い割合です。
大学サイトは、セキュリティ意識の高さからか、見慣れないアクセス元(ボット)を機械的に遮断する設定が比較的多く見られました。これは改ざん対策としては妥当ですが、正規のAI検索クローラーまで一律に弾いてしまうと、AIの回答に自校が登場しなくなる可能性があります。守りの設定が、意図せず「AIから見えない大学」を生んでいる場合がある、ということです。
受験生はすでにAIで大学を調べている
大学がAI検索を意識すべき理由は、企業や自治体よりも切実かもしれません。進学先選びは、まさにAIに相談されやすいテーマだからです。
「◯◯の資格が取れる大学は?」「△△県で管理栄養士を目指せる私立は?」——こうした問いにAIが答えるとき、参照されるのは各大学のサイト情報です。ここが整理されていなければ、AIは古いパンフレット情報や第三者のまとめサイトを頼りに、不正確な回答を組み立てるかもしれません。学部改編や入試変更が反映されないまま受験生に伝わるリスクもあります。
正確に読ませるための整備
受験生がAIで進学先を調べる時代の広報設計を支援します。構造化データの実装、llms.txt の設計、AIクローラー方針の確認まで。「自動生成のファイルは置いてあるが、中身を自校で決められていない」という状態の見直しから承ります。島根県から全国対応です。
まとめ
企業・自治体・大学と3つの母集団を調べて、共通して見えてきたのは「まだ論点として認識されていない」という段階です。そのなかで大学は、医療系という分野がすでに動き始めていました。進学という、AIに最も相談されやすいテーマを扱う以上、大学のサイト整備は早めに効いてくる投資になるはずです。
【調査概要】対象:全国の4年制大学812校(「◯◯大学」を正式名称とし、公式サイトを特定できた全数。短期大学・専門職大学・大学院大学・専門学校を除く)/調査日:2026年7月/方法:各校公式サイトのトップページ、/llms.txt、/robots.txt を取得し機械判定。llms.txt はHTMLを返す偽陽性2件・空ファイル1件を目視で除外。64校は応答が得られず判定不能のため未設置として集計。設置率は母集団812校を分母とする。企業・自治体調査と同一の判定基準・スクリプトによる。数値は調査時点のもの。
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