米国のAI規制で、対照的な2つの出来事が同じ週に起きました。1つは、連邦政府が自ら設定した期限を、何の説明もなく静かにスルーしたという話。もう1つは、カリフォルニア州の新しい法律が、予定どおり本日施行されたという話です。「約束されたはずの規制が止まる」動きと、「新しい義務が実際に始まる」動きが、同時に進んでいます。
連邦政府、8/1のAI規制期限を静かにスルー
トランプ政権が6月2日に出した大統領令(Executive Order 14409)には、8月1日という具体的な期限が定められていました。NSA・CISAが、高度なサイバー能力を持つ「対象フロンティアモデル」を評価するための、機密扱いのベンチマーク手法と、自主的な事前開示の枠組みを整備する、というものです。しかし、この期限は何の音沙汰もなく過ぎ去りました。連邦官報への掲載、NISTやCISAからの公表文書、ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)からの声明——いずれも確認されていません。
約束されていた3つの成果物、機密扱いのベンチマーク手法・自主的な事前開示の枠組み・連邦サイバー人材計画は、いずれも姿を見せませんでした。フロンティアAIラボ各社にとって深刻なのは、「対象フロンティアモデル」がどう定義されるのか、依然として明確になっていない点です。この定義が固まらない限り、自社のモデルが規制対象になるのかどうか判断できず、結果として各社は、省庁間の調整が長引く間、モデルのリリース計画を保留せざるを得ない状況に置かれています。
一方カリフォルニアでは、AI電子透かし義務化法が本日施行
連邦レベルで規制が止まる一方、州レベルでは新しい義務が予定どおり動き出しました。カリフォルニア州法「SB942」が本日8月2日に発効し、月間利用者数がカリフォルニア州内で100万人を超える生成AI事業者に対し、いくつかの新しい義務を課しています。生成した画像・動画・音声に、C2PA(コンテンツの来歴・真正性を証明する業界標準規格)互換の来歴情報を埋め込むこと、無料で使える公開の判定ツールを提供すること、利用者がAI生成物に目に見えるラベルを付けられる機能を用意すること、の3点です。違反した場合の罰則は、違反1件・1日あたり5,000ドルとされています。
この法律の対象になるのは、大手の生成AIサービス事業者に限られますが、影響範囲は広いと見られます。今回お伝えしたSeedance2.5のような動画生成AI、あるいはSunoのような音楽生成AIも、利用規模によってはこうした州法の対象になり得ます。技術の進化のスピードに対して、規制のあり方が地域ごとにばらつきながら追いついていく、という構図がここにも表れています。
今回の2つの出来事は、米国のAI規制が、統一されたルールとして機能していない現実を象徴しています。連邦レベルの規制は省庁間の調整で滞留し、明確な期限すら守られない一方、カリフォルニアのような個別の州は、独自の法律を予定どおり施行しています。今後もこの傾向が続けば、AI事業者は「連邦の方針が固まるのを待つ」のではなく、「各州ごとに異なる要件に、個別に対応する」実務を迫られることになります。海外から日本の事業者がこうしたサービスを利用する場合も、提供元がどの規制の下で運営されているかによって、機能や表示の違いが生じる可能性がある、という点は覚えておく価値があります。
AI活用の設計
AI規制は国・州・地域によって足並みが揃っておらず、今後も個別の対応が求められる場面が増えていきます。利用中のAIサービスが、どの規制の下で運営されているかを含めた、実務に即したAI活用の設計をサポートします。「規制の動きが速くて追いきれない」という方は、お気軽にご相談ください。島根県から全国対応です。
まとめ
AI規制の動向を踏まえた活用のご相談はお気軽にどうぞ。
AI活用のご相談はこちら
無料相談する →