発注データが示す現実:WordPress需要は43%で安定——「供給側の飽き」と「需要側の実需」のズレを読み解く

2026年8月19日 6分で読めます
目次
  1. データが示す現実——発注者の43%がWordPressを選んでいる
  2. なぜ発注者はWordPressを選び続けるのか
  3. 「SaaS is dead」と同じ構図——現場のデータが語ること
  4. まとめ

「ヘッドレスCMS・React・Next.jsの時代が来た」——開発者界隈ではそういう声がここ数年強くなっています。しかし発注データを見ると、景色がまるで違います。年間1,100億円規模の案件が動くビジネスマッチングサービス「レディクル」を運営するフロンティア株式会社のCMO・田中翔理氏が、最近半年500件の受託案件を分析したところ、WordPressが全案件の43%を占め、CMS案件に限れば85%のシェアに達していました。しかも月ごとのブレは36〜51%の範囲で安定しており、「急落している」という兆候はまったく見られません。供給側(開発者・制作会社)が「もうWordPressは古い」と感じている一方、発注者(企業・経営者)は依然としてWordPressを選び続けている——この「視点のズレ」こそが、今のWeb制作業界の議論の核心にあります。

データが示す現実——発注者の43%がWordPressを選んでいる

田中氏がX(Twitter)で公開した分析によれば、直近半年間のレディクル経由500件の受託案件のうち、WordPressが担った案件は43%。CMS案件全体に占めるシェアは85%にのぼります。しかも「WordPressでの制作を希望」と明示的に記載した案件が71件あり、これだけでも全体の約14%を占めます。月次で見ても、最も少ない月で36%、最も多い月で51%という範囲に収まっており、「特定の月だけ突出して多かった」わけではなく、半年を通じて安定した需要があったことが読み取れます。

一方、ヘッドレスCMS・Jamstack・Reactベースのサイト・Next.jsといった、開発者界隈でよく話題になる技術スタックは、このデータの中にほとんど登場しなかったとのことです。このデータはあくまでレディクルというB2Bマッチングサービス経由の案件に限られており、スタートアップや内製開発のプロジェクトは含まれていません。その点は留意が必要ですが、「中小企業・一般法人の発注市場ではWordPressが依然として主役」であることを示すデータとしては、相当に説得力があります。

📊 出典:フロンティア株式会社CMO 田中翔理氏のX(Twitter)分析投稿
🔢 母数:直近半年間のレディクル経由の受託案件500件
🏆 WordPress比率:全案件の43%(CMS案件に限れば85%)
📌 明示案件:「WordPress希望」と明記された案件が71件(全体の約14%)
📈 月次変動:36〜51%の範囲で安定して推移
⚠️ データの性質:B2Bマッチング経由の案件。スタートアップ・内製開発は含まず

なぜ発注者はWordPressを選び続けるのか

フリーランスやWeb制作会社から寄せられた声として挙げられているのが、「移行後の後悔事例」です。新しい技術スタックへの移行を試みた結果、「更新が難しくて自分では触れなくなった」「開発者がいなくなると誰も保守できない」という事例が、発注者側に広がっているとのことです。発注者が「更新しやすさ」を最優先に置く背景には、こうした現場の経験が積み重なっています。

発注者の多くは、エンジニアではありません。担当者が自分でブログを更新できること、スタッフが画像を差し替えられること、外注しなくても日常的な更新ができること——こうした「非エンジニアが使えること」の優先度が、技術的なモダンさより一貫して高い。WordPressが長年かけて積み上げてきた「直感的な管理画面」という資産は、開発者が思う以上に大きな価値を持っています。

本質
「供給側が飽きた」と「需要側が飽きた」は、別の話

Web制作・開発の界隈で「WordPressはもう古い」という空気が広がるのは、主に供給側——毎日WordPressを触っている開発者・制作者——の視点からです。同じツールを何年も使い続けることへの飽きと、より新しい技術への興味が重なると、「この技術は終わった」という感覚が生まれやすくなります。しかし発注者にとって、管理画面の使いやすさや、担当者が変わっても引き継ぎができることの価値は変わりません。「供給側の飽き」と「需要側の実需」を混同しないことが、市場を正確に読む上で重要です。

「SaaS is dead」と同じ構図——現場のデータが語ること

先日このブログで「SaaS is dead」論争を取り上げた際も、同じ構図がありました。AIで業務システムを全部作れるという議論が盛んになる中、現役経営者からは「バグ修正・保守・AIコストの現実」という声が上がっていました。実際にシステムを使い続ける側にとって、技術の新しさより「動かし続けられるか」「誰でも使えるか」の方が、優先度が高い場面が多い。

「WordPress is dead」論も、同じように読み解けます。インターネット上の全Webサイトの約40〜43%はWordPressで動いている(W3Techs調べ)という事実は、今年も変わっていません。今年このブログで追ってきたwp2shell・XSS2Shell・Forminator Formsといった脆弱性は、WordPressへの攻撃が増えていることを示していますが、それは「需要が高くて攻撃対象として旨味がある」という裏返しでもあります。

レディクル経由500件の分析でWordPressが43%、CMS案件の85%を占める
✅ 月次でも36〜51%の範囲で安定推移、急落の兆候はない
✅ 発注者が優先するのは「更新しやすさ」「誰でも触れる」という実務的な価値
✅ ヘッドレスCMSなどのトレンドは発注データには登場しない
✅ 教訓は「供給側の飽き」と「需要側の実需」を切り分けて読むこと
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まとめ

レディクル田中翔理CMOの500件分析:WordPress需要は43%で安定推移
CMS案件のシェアは85%、月次でも36〜51%の範囲で安定
発注者の優先順位は「更新しやすさ」、技術の新しさより実務的な価値が勝る
✅ 「SaaS is dead」と同じ構図——供給側の飽きと需要側の実需は別物
✅ WordPress需要の安定は、脆弱性攻撃が増えているという裏返しでもある

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